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2011/08/09

装丁デザインとCDデザイン



講談社から発売中の『大江戸釣客伝/夢枕獏著』
http://www.bookclub.kodansha.co.jp/books/topics/oyedo/

表紙絵は松本大洋氏。

装丁デザインは、いつもCloudのデザインを手がけている菅渉宇氏です。
CloudのCDを持っていらっしゃる方には、どこか馴染みのあるデザイン。
独特のシンプルで、味わい深いデザインです。

ただ今全国の書店に並んでいますので、
機会があれば手に取ってみてください。
少し凝ったデザインです。

例えば、表紙の紙をすべて取り除いたところにデザインされた釣り針は、主人公の津軽釆女が著した『何羨録』に描かれた江戸時代の釣り針だったり。(そんなの誰も気づかないかも)
(『何羨録』は、世界最古の釣りの本と言われるアイザック・ウォルトンの著作『釣魚大全』とほとんど同じ時代に書かれた、日本の釣りの指南書)

表紙に描かれた絵は、松本大洋氏によると、上巻は菩薩を意識し、下巻では仁王を意識して描かれたそう。
先日手塚治虫マンガ大賞を受賞されたばかりの松本氏。この描かれた表紙絵も素晴らしいです。


物語の内容も味わい深い内容。
江戸時代の釣りの世界を書いたものですが、赤穂浪士の討ち入り(討たれた吉良氏はこの本の主人公「津軽釆女」の舅)が物語に絡んでいく様は、読んでいてなかなか切ないものがあります。
それから、この物語に出て来る「朝湖」とは、元禄時代に、生類憐みの令で島送りになった絵師の「英一蝶」のことです。へええ、英一蝶さんも釣りをやってたんですね。

「釣り」はあまり興味ない方でも、もしかして、昔の東京湾へと舟で漕ぎ出す「江戸時代の釣り」にはまた違う何かを感じることができるかもしれません。
日本の釣り文化は奥が深いです。

表紙絵、装丁、内容。
このどれもが渾身の力を込め、直球で、世に出された『大江戸釣客伝』です。