ピーター・ローゼンダール/『クレセント』インタビュー
A/ ピーター・ローゼンダール Q/曇守
Q 今回の録音はいかがでしたか?
A とても楽しかったよ。
Q 今回録音を行ったビャーネ・ハンセンはピーターには初めてのエンジニアでしたが、彼の録音はどうでしたか?
A 素晴らしかった。スタジオに入って初めて音を出した時に驚いたよ。一音目でとてもきれいなピアノの音が聴こえてきて。
Q そうなんですね。モニターの音の良さについては(前回録音した)マグナス・ヨルトも同じようなことを言っていました。
今回のレコーディングの前に、ピーターは3人でリハーサルをやってレコーディングに臨んでくださったのですよね。
A そう、マッズ(ベースのマッズ・ビンディングのこと)の家でリハをしました。
Q 今回のアルバムのためにたくさんの曲を書いてくださったわけですが、ピーターはどんな時に曲作りをするのですか?
A 例えば自転車に乗っている時とかスーパーで買い物をしている時、それから散歩している時。ピアノから離れている時に曲を思いつくことが多いのだけれど、家に帰ってピアノの前に座るとほとんど曲を忘れてしまっていることが多いんだ。
Q 今回のアルバムの中で、何曲かにピーターはフルーガボーンを吹いてアレンジを加えていますが、どうしてフルーガボーンを?
A 時々僕は柔らかい音を作りたくてフルーガボーンを吹いている。暖かい音が好きなんだ。
ピアノだと鍵盤と鍵盤の間の音は出せないけれど、管楽器だと鍵盤と鍵盤の間の音が出せるだろ?
Q そうですね。管楽器と言えば、私はピーターが2007年に録音した”SOLO"が大好きです。一人で貝殻とかビスケットの缶とかを使って多重録音したあのアルバムです。あのアルバムをコペンハーゲンの街で見つけて日本に帰って聴いた時に、強く思いました、「この人のアルバムを作ってみたい!」と。
A 本当に!?
Q はい。個性的すぎて(笑)。驚きました。この人はなんて楽しんでいるのだろうと。
今回のアルバムについて教えてください。タイトルの”crescent"の意味を教えてください。”crescent"は月を表すcrescent(三日月)ですか?
A 僕が今回タイトルに使った" crescent"は、人類の古い文様、シンボルの一つに表されている三日月型のこと。月を特別に意味しているわけではなく、音の響きが好きだったからだけのことだよ。(月でも何でも)自由にイメージできるクレセントのままのほうがいい。
Q ふーむ、そうなんですね。
今回のピーターの曲はどこか懐かしくて柔らかです。それでいて輪郭がきっちりしている。自由に想像できる「三日月」というタイトルどおりのイメージです。
モーテンはスタジオの空気を和ませてくれるし、マッズはそこにいてくれるだけでいいような雰囲気を持つ穏やかな最高のベース奏者でした。
ありがとうございました。
*インタビューは4月のコペンハーゲン録音後に行ったものです。(曇守は、けっこう誘導尋問的、自己満足的です・・ :) 資料として配布したパンフから抜粋して掲載しました。
ピーター・ローゼンダールの、このマッズ・ビンディングとモーテン・ルンドとのトリオのコペンハーゲンジャズハウスでの名演『Live at the Copenhagen Jazzhouse』はジャズファンの間では知れ渡るところ。眠っていた私の中のDenmark Jazz を呼び起こした一枚です。
この素晴らしいトリオの7年ぶりとなるスタジオ録音盤『クレセント』、発売中です。
デンマークの名工ビャーネ・ハンセンのオーディオも聴き所の一つ。前回録音と同じように今回も素晴らしい音場空間が展開されています。