9.21発売
蟬丸 - 陰陽師の音 - [CD+BOOK]
スガダイロー × 夢枕獏
[CD]
背景音録音:京都精華大学教授 小松正史
夢枕獏 『陰陽師』書き下ろし短編「蟬丸」
小松正史『陰陽師』の音、京都の音
東雅夫 小説『陰陽師』が奏でる音楽
スガダイロー 本は読めません
制作 :Cloud, B.J.L. , AWDR/LR2
DDCB - 13033
¥3,500+tax
『蟬丸 -陰陽師の音- 』曲解説
1、一行の賦 (作曲 芝祐靖)
雅楽家 芝祐靖さん作曲の美しい曲。龍笛のソロは松尾慧さんです。
映画『陰陽師』の中で、龍笛・葉二(はふたつ)を源博雅が吹くシーンで使われました。背景音に流れているのは、京都下鴨神社で秋に実際に録音された虫の音です。
2、縄文 (作曲 辻佑)
林英哲さんに師事する辻祐さんによるソロ。縄文の神を召喚するようなリズムで始まります。
3、陰陽師・メインテーマ (作曲 梅林茂)
フィギュアスケート羽生結弦選手の2015-16シーズンのフリープログラム「SEIMEI」で使用されたことで話題になった映画「陰陽師」のメインテーマをスガダイローさんが新たに編曲。音の小さな一滴が大河へと流れるかのように、古典からジャズへ、ジャズからフリーへと変化し、百鬼夜行を表すカタストロフィーを経て太鼓ソロで終わります。
最後の方では、龍笛に代わって磐笛(いわぶえ)が使われています。磐笛は縄文の頃から吹奏祭具として使われた石でできた笛です。
4、蟬丸
夢枕獏さんの書き下ろし短編「蟬丸」にスガダイローさんが曲をつけたものです。
逢坂山に住む琵琶の名手蝉丸の元に3年間通い続けたという、「今昔物語集」の中の源博雅の有名なエピソード。それを今回初めて夢枕獏さんが『陰陽師』の短編として書き下ろしました。曲はこの小説「蟬丸」に出てくる琵琶の秘曲「啄木」をなぞらえた琵琶の音を模した東保光さんのベースで始まり、松尾慧さんの龍笛とスガダイローさんのピアノの美しいメロディが続きます。後半に流れる虫の音、その音の一つとして夢枕獏さんもパーカッションで参加しています。獏さんは「鈴虫」の音です。耳を澄ませて聴いてみてください。
5、蟬丸もののけと語る
アルコ奏法を使ったベースと、ピアノの小編。
6、龍神祭
『陰陽師・夜光杯ノ巻』(文藝春秋)に収録されている「龍神祭」をトリビュートした作品です。「龍神祭」は小説『陰陽師』の中の、音楽を題材にした短編の一つ。「龍神祭」は、善女龍王によって盗まれてしまった源博雅の笛を取り戻すために晴明、博雅、蝉丸が神泉苑へ舟を浮かべ、天竺にあるという阿耨達池へ向かうという幻想的な話。神々の集う天竺にあると言われる阿耨達(あのくたっち)池をイメージした曲。辻佑さんのパーカッションがどこか遠い湖を満たす水音のようでもあります。阿耨達池は仏教経典に書かれた想像上の湖なのですが、チベットにあるマーナサロワール湖だとも言われています。
7、道満
スガダイローさんが『陰陽師』の重要な登場人物の一人である蘆屋道満(あしやどうまん)をイメージして書いた曲。道満は官位を持つ安倍晴明と異なる在野陰陽師で、狡獪で奔放なイメージを持つ一方『陰陽師』の様々な場面に登場し晴明とはまた違う魅力を見せます。
妖かしや静謐の美しさだけでなく、おどろおどろしさや激しさもまた『陰陽師』の大きな魅力です。
曲の始まりでピアノベースと共に使われている打楽器は、奈良時代から仏教儀式で使われてきたシンバルのような楽器、鐃鈸(にょうはち)(現代ではチャンパとも呼ばれる)です。静かな曲から一転して、スガダイローさんのピアノと辻佑さんの太鼓のダイナミックな掛け合いも「道満」の曲らしく、大きな聴きどころです。
8、晴明
スガダイローさんが『陰陽師』の主人公安倍晴明をイメージして書いた曲。ベースとピアノだけの曲です。いつも変わらない晴明の庭や簀子の上での博雅と晴明との会話、すべてを達観したような晴明の穏やかな雰囲気が伝わってくるような曲です。
9、しのびよる森の神々
短編「蝉丸」の中からオノマトペ(擬音表現)だけを抜き出し、そのオノマトペに実際の音をつけるという逆転の発想で、スガダイローさんが「音の小説」にしたものです。その擬音に「蝉丸」曲のメロディが重なり、新しい一つの作品になっています。小説「蝉丸」に描かれた様々な擬音、そのひとつひとつの音はスタジオでミュージシャンが実際に録音しました。例えば、一番最初に出てくる「ほっ」は月の出の音、最後の方で4度鳴り響く銅鑼の音は四天王が次々に現れる様を表しているということです。(なるほど)
小説「蟬丸」を読んでから音を聴いても、音を聴いてから「蝉丸」を読んでも、何度も楽しめる、すてきな作品です。
10、陰陽師・メインテーマ~蝉丸は眠らない~ (作曲 梅林茂)
ベースとピアノだけの小編。映画『陰陽師』メインテーマが静かに流れます。
11、長慶子 (作曲 源博雅)
平安時代中期に源博雅が作曲したと言われている曲。様々な行事で参集者が退場する時の音楽として用いられてきました。雅楽で演奏される伝統的な「長慶子」とはまた違う演奏です。まるで小説の中で源博雅が龍笛を吹いているかのような感覚で、森の精霊と呼応するかのように自然に演奏していただきました。龍笛演奏の最後の方でバックに流れてくる音は、京都の街に唯一残る1200年前のものと同じ「糺ノ森の自然音」です。耳を澄ますと、泉川のせせらぎ音の他に鳥の鳴き声や樹の葉の擦れ合う音など10種類ほどの音が聞こえてきます。
この自然音とアルバムの一曲目に流れる「下鴨神社の虫の音」は、京都精華大学教授小松正史さんによる録音。その時のエピソードは『蟬丸』のBOOK部分に小松さんが解説されています。音の専門家である小松正史さんの、音について書かれた文章も大変に興味深い内容です。