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2016/06/22

縄文の音を探す





9月に出す新作のためのレコーディング、ミキシング、マスタリングがすべて終了。
企画立ち上げから1年あまり。
北欧のジャズと並行しながらの仕事。
やっとここまでこれました。

龍笛の背景音に京都下鴨神社の糺ノ森で録音された音を入れました。
これは京都の街中に残る森の音。この音と箱根で出会ったことが大きな始まりです。
『陰陽師』という小説の音をどうやって作ろうと試行錯誤を繰り返していた時に偶然に出会った音。
箱根のヒメシャラの原生林にある美術館。モネの「バラ色のボート」に揺蕩うようにその音は添えられていました。私は美術館の方に鉛筆と紙を借り、夢中でその音の様子を書き写しました。水の流れる音、森の木の葉のざわめき、鳥の声、舟を櫂で漕ぐ音。
糺ノ森の音は、今も街中に残る貴重な音です。
縄文の頃から変わっていないのかもしれません。


今回のアルバムのテーマの一つが縄文。
オノマトペ。日本の言葉。龍笛。ジャズ。打楽器。
それに加え背景音を使うことで一気に空間が広がりました。
素晴らしい音です。
音楽家はもちろん、音を作ってくださったエンジニア、糺ノ森の音を提供してくださった大学教授、今回の音にまつわるすべての人たち、関係者の方々のおかげです。
縄文の原風景音が人と人をつなぎ、音が物語を生み、物語が音を生む。ジャズのインプロのように作品が出来上がっていきました。



写真は東北の渓流でこの6月に撮影しました。
縄文時代から変わることのない風景の一つです。
もしかしたら大昔の糺ノ森もこういう森だったのかもしれません。

北欧の草地や森から、日本の森へ。
しばらくは心が北欧に戻れないくらいに深くのめり込んでしまいました。