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2013/09/22

歌舞伎座で見る月



相模湾を上がる月
十七夜は立待ちの、既生魄の月

歌舞伎座の「陰陽師」では、
赤い満月と白い満月の、
二つの月が印象的に使われていた。
「オール讀物(文藝春秋)」10月号に歌舞伎「陰陽師」観劇記(原作者 夢枕獏)が掲載されています。原作者の視点から書かれた観劇記です。

「染五郎の晴明 主人公で、あまり感情をあらわにしないこの人物。実は、演ずるのがかなり大変な役なのである。立ち姿そのものが美しく、存在感のある役者でないと、とても勤まらないのでだが、染五郎にはそれがあるのである。そのたたずまい、背中、呼吸、どれも見ているだけで惚れ惚れするのである」

「海老蔵の将門が、圧巻である。鬼と人との間を行き来する時の、表情、声、その姿の変化、減り張りには、
観る方も心をわしづかみにされて、物語の底なし沼に、引きずりこまれてしまう」

「興世王、本編唯一人のこの大悪役を、愛之助が生々と演じている。ラブリンさま、こんなに悪役が似合うとは、これも楽しい大発見である」
   

夢枕獏(「陰陽師」観劇記より一部抜粋)









中秋の名月の夜は本物の月ではなく歌舞伎座の舞台の「描かれた月」を観ていました。
台風の夜も歌舞伎座にいました。
台風の日も名月の夜も歌舞伎座の舞台は脚本どおりに進行、いつもと同じですが、役者のコンディションはすべてが違う。お客様もすべて違う。巨大な生物のように生の舞台は本当にスリリングです。これはジャズにも言えることです。スリリングだから面白いのです。
回を重ね観る度に、眠っていた歌舞伎への熱い感覚が呼び覚まされた今回の新作。
これからの歌舞伎を背負って立つであろう、各家の跡継ぎがこれだけ揃い新作に臨む姿はもう観られないかもしれません。
日本の古典伝統芸能を継承する方たちはたくさんいらっしゃいますが、それを営業的に押し進めていくのは本当に大変なことだろうと思います。歌舞伎はその中でも興行的にも成功している珍しい例で、勘三郎さん、団十郎さん不在の歌舞伎座で1800席の座席25日分が発売と同時にSold Outになったということはそれだけでもすごいことです。


昔は800円の一幕見もあったのに、今回は幕見2000円。でもまあいいか。
一ヶ月続いた9月新作公演ももうあと4日。いよいよ25日は千穐楽!

10月は通しの「義経千本桜
昼の部の狐と夜の部の狐は役者が違います。序幕「鳥居前」は尾上松緑。大詰「川連法眼館」は尾上菊五郎。見所満載。
またいつもの古典へと歌舞伎座が戻って行くのですね。