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2015/04/12

Lujonレビュー2



new!!
オランダのwebマガジン「JAZZENZO」に掲載された『Lujon』のレビューです。



静かな川は水が深い――この言葉はピアニスト小橋敦子の演奏にもあてはまるだろう。2005年からオランダで活動を続けている小橋は、今回のアルバムでもサウンド、色彩、感触にこだわりなが美しい音空間を創り出した。
新作Lujonは小橋とベーシストのフランス・ヴァン・デル・フーヴェン、ドラマーのセバスティアン・カプテインらとのトリオ作品。小橋はこれまでに彼らと数作のデュオアルバムをリリースしているが、2013年より定期的に行なっているAusterlitzでの早朝サンライズコンサートが、このトリオのアルバムLujonに繋がった。
Lujonには三人のメンバーのフリー・インプロヴィゼーションによる4つの即興曲の他、マイルス・デヴィス、ウェイン・ショーター、ジョージ・ガーシュイン、バーデン・パウエル、チャーリー・チャップリン(Smile)、ヘンリー・マンシーニ(Lujon)らの曲が収録されている。こういった幅広いレパートリーの演奏の隅々から三人のメンバーたちの音楽的会話が常に聞こえてくるのに気づく。
インプロヴィゼーションによる即興曲では、広々とした空間と抑制の効いた個性、そして三人の動と静のダイナミックスから生み出される調和が聴かれ、禅画のような雰囲気さえ感じられる。
Lujonから聞こえるメランコリック、ミステリアス、静謐な印象は、一流の演奏家である彼らの思慮深さと細やかな気配りから創り出されたものだろう。小橋―ヴァン・デル・フーヴェン―カプテインらの音楽的会話には、奥行きの深さ、ダイナミックス、広々とした空間が備わっていて、それが絶えず私たちの耳をとらえて離さない。Lujonはこれから長く愛聴されるアルバムになるに違いない。

by Erno Elsinga /Jazzenzo